「四号特例の縮小」について

最近は四号建築物でも積極的に許容応力度計算をして構造確認する建物が増えましたね。弊社の設計案件は、愛知県・岐阜県・鹿児島県・広島県・群馬県・・・地方からの依頼が増える傾向になり、依頼者様には深く感謝を申し上げます。左の画像は2025年3月完成予定のシザーズトラスのある教会を木造軸組工法で設計しております。

今日は約2年前に公表となりました「四号特例の縮小」について書いてみようと思います。

近年の地震多発などにより耐震等級計算(長期優良住宅)依頼や許容応力度計算の依頼が年々増えております。お施主様の建物に対する考え方は20年前に比べ大きく変わりました。弊社の構造設計案件(住宅・長屋・共同住宅・店舗・レストラン・教会など)のほとんどが耐震等級2以上でのご依頼で設計しております。

そして、2000年の基準法大改正から25年が経ち、これまで日弁連の四号特例廃止の訴えと建築士会の声をあつめて、今回の法改正につながったと聞いております。2023年のデータですが約80万棟新築着工件数のうち、約70万棟が新築戸建て建物という統計のなか、その1割にあたる約7万棟がクレーム案件だと住宅検査会社様からお聞きしています。ここ数年、弁護士様からの構造検証依頼も増えました。そのトラブルの原因は地盤と基礎に関するものが約6割とのこと。そのような背景もあり、ついに!法改正となりました。

現在、耐震等級3で構造設計することは当たりまえの時代に移行しつつ、省エネ計算も義務化になり、木造建物を数値で見える化する時代になってきました。車を購入するとき安全性を第1に考えて購入する方が多いと思いますが、住宅も居住者が安心を求めているということですね。

今回の2025年法改正(※国土交通省説明資料)で構造基準の改正省エネ基準適合義務化になり、今まで4号建築物だった建物(2階建て以上かつ延べ面積200㎡超)の木造建築物等は「新2号建築物」になるわけですが、確認申請の手続き上、必要な書類として、屋根詳細図や基礎の鉄筋入り断面図などを添付する「構造詳細・仕様書」が追加されました。参考書式もサンプルがでていますね。まさに、クレーム案件を防止するための施主側に立った考えです。この1枚を添付するか、しないかは大きな意味があります。

もっと実務レベルな話をしますと、確認申請には矩計図を添付しなくても良いですが、住宅性能評価申請には矩計図が必須です。もちろん基礎断面が描いてあり今回の法改正添付図書にも使えるということになります!性能評価申請の主旨は自己評価の設計書を作成し、それを審査機関が審査しお済み付きを貰うという、もちろん設計者責任100%だということ。品確法の壁量基準値も廃止になり、ますます設計者の手腕が問われますね。

左に、「改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅(軸組工法)等の確認申請・審査マニュアル※」より、基礎スラブ・基礎断面図を貼り付けておきます。基礎構造設計の重要性が明確になりますね。 ※出典:国土交通省


今回の改正では必要壁量表が廃止され、壁量等の基準に対応した(設計支援ツール)に変わります。この支援ツールは3種類の計算方法があって複雑ですが、ホームズ君構造EX》を使えば、確認申請もスムーズに出せると思います。以前に比べると業務量は増えますが、従前の必要壁量以上の数値が算定結果で出ることが多いため、地震には強い建物となります。審査するほうも厳しくみて頂き、これからの一戸建て住宅に居住される方へ、より良い建物の設計をご提案できるよう努力してまいりたいと思います。

投稿者:KJG金城起弘